【コラム】虫に全任せする頭骨標本づくり①(テンの頭が骨になるまで)

頭骨標本づくり
以前山中で自然死したイタチを見かけた際に獣や鳥に荒らされず、腐肉食昆虫たちの力により10日たらずで全身綺麗に白骨化している様子を見て、いつか標本にしてたいなぁとそのまま冷凍庫に眠らせていたテンの頭部を野外放置で標本化するまでの過程を記録しました。
※骨のみになるまでかなり人を選ぶ写真が続きますので念のため隠しています。見たい方は赤字部分をクリックすると画像が表示されます。
取り掛かり開始は2025年6月30日
記録的な速さで梅雨明けし、期間中の最高気温は30~32℃を行き来する猛暑日でした。
初日
頭骨1日目の画像

今回は皮を剝いだ状態で取り掛かります。耳、鼻は軟骨のためこの時点で無い
テン頭部のサイズ、重量感は中ぶりミカンくらい(適当)計測しておけばよかった…
冷凍庫に入れるまでは標本にする気満々だったので余分な皮、肉は取り除いていますが面倒ならそのままでも綺麗に分解してくれます。
少なくとも山で見たイタチは最終的に骨と毛以外はすべて無くなっていました。
設置場所は私有地内の人が近寄らない納屋の裏、日陰の時間帯が長そうな場所にポンと置きます。
虫が綺麗にしてくれる過程で細かい歯が抜け落ちてしまうので後々回収できるようにコンクリの上がいいかなぁとも思いましたがふと、
土と接している方が分解が早そうな気がして撮影後コケの上に移動しました。この辺りもいつか比較してみたいです。
冷凍庫から出してすぐのため匂い等は全く無し。置いて4,5時間後にハエが少し飛び回っていました。
2~3日目
頭骨2.3日目の画像

いよいよ周辺の虫たちが察知して集まり始めました。
どこにでもいるハエや腐肉を好む「シデムシ」が大集合です。
シデムシに関しては普段生活している分には見かける機会が無い昆虫なのですが
やはり何かしらの腐臭を感じ取っているのでしょうか。
シデムシも色々と種類がいるようですが今回選んだ場所では「ベッコウヒラタシデムシ」が多いようです。

ベッコウヒラタシデムシ サイズは1円玉くらいのサイズ、普段はどこにいるのだろう
気になる周辺の匂いは1m圏内まで近寄ると急に管理がなっていない公衆トイレみたいな匂いがします。
ですが2,3mも離れればほぼ気にならないレベルです。
4日目
頭骨4日目の画像

時間帯によってたかる虫の種類が違う印象を受けました。
午前中:ハエ多め、シデムシ少なめ
午後~夕方:シデムシだらけ
気温によるものなのかこの辺りの因果関係は謎です。撮影はできませんでしたがカラスアゲハのような蝶が
頭骨にかなり近い地面から給水行動を取っている様子も見受けられました。頭頂部周辺の骨の露出が増えてきたように思います。
周辺の匂いは相変わらず。
5~6日目
頭骨5.6日目の画像


表面の分解が進み、骨の露出が初日と比較すると一目瞭然です。
この日を境に訪れるシデムシの種類が変わり、ダンゴムシ程度のより小型な種類が集まりだしました。
※頭骨の左側に集中している一団
それと山で分解されたイタチと違う気付きが一つあり、蛆が沸いていません。
初日からハエがたかっているので卵を産み付けているはずですが外観からは確認できませんでした。
イタチと違い頭部だけなので蛆の温床になりそうな臓器系が無いのが要因かもしれません。
シデムシが入れない脳が詰まっている箇所や歯肉などの細かい部分は蛆が綺麗にしてくれるので
早く出てくれるといいのですがこのまま観察を続けます。
天候は初日から晴れ続きですが日陰が幸いし、朝露の影響か骨の乾燥はしていないようです。
7~8日目



頭頂部の肉が乾燥しきったような場所が綺麗になるか心配でしたが8日目の午前中には写真の通り完全な骨の状態になりました。
この状態になると虫たちも食べる箇所が無いからかほぼ退散しています。心配していた脳の部分も綺麗に空っぽ。
抜け落ちた歯も特にないようでほぼ完全な状態で回収に成功しました。これは嬉しい。
結局期間中に一度も雨が降ることはありませんでしたが完全に乾燥しきることなく設置から8日後の7月7日、七夕に回収です。
周辺の匂いは全く感じなくなりましたが骨に鼻を近づけるとしみついた腐敗臭がします。
まとめ
虫たちの力がすごいの一言です。
一連の流れで時間帯や日数で近寄る虫の種類が変わり、役割分担のようなものが成立しているのが印象的でした。
この虫たちがいなければ山中は分解されずにひたすら腐敗する死骸だらけになると思うと
縁の下の力持ち的な無くてはならない存在なのだと循環を感じることができる機会になりました。
その後

ハイターで殺菌中。見えないところに隠れた虫たちを除去する役割もあります。
汚れが付着しているので殺菌漂白を兼ねて1.5Lの水にハイターをキャップ2杯分入れてそこに3時間ほど漬け込みつつ、
歯ブラシで磨いていきます。液の分量は正直適当です。経験上原液じゃなければ大丈夫な気がしています。ここから標本化する処理を行っていきますが長くなったので次の記事に。正直検索すれば先駆者様たちの詳しい記事がいくらでも出てきますがせっかくなので全行程を記録します。
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注意
この方法は放置で綺麗な骨を入手する時間のない方にピッタリな方法ですが
大なり小なり異様な匂いが漂うのでご近所トラブルにならないように置く場所は考慮する必要がありますのでその点はご注意ください。
今回のサイズだからそこまで腐臭が漂わずに済みましたがこれがシカやイノシシサイズになるととんでもないことになるはず…です。
大鍋で煮込んだり、池に沈めてみたり、骨を取る方法はいくつかありますがどれも一長一短なので使い分けが大事になります。

骨を置いていた跡地。苔すらも分解されている
(文責:土肥健人)


